FIU・JAPAN・GAZETTE 1996年6月30日


▽ミーティング報告/「電子ネットワークと表現をめぐって」
インターネットやパソコン通信などの電子ネットワークとその規制の動きについて、小倉利丸さん、粉川哲夫さん、ふたりの方に話していただきました。より関心のある方にはそのヴィデオをダビングして渡すことにし、ここではその要旨だけを短くまとめておきたいと思います。今回は小倉さんの話の部分だけで、粉川さんの話は次のガゼットになります。参加者は約30名。
……新聞、雑誌、テレビなど、さまざまなメディアにおいて、インターネットを中心とした電子ネットワークが取り上げられています。その背景には、これまで、言ってみればオタクの世界のものであったものが、ユーザーが増えることで社会性を帯び、それ自体がマーケットとして、あるいは、企業のビジネス・チャンスとして捉えられるものに変化してきたことがあります。インター・ネットの場合、これまでのマス・メディアと違って、端末を操作するすべての人が情報発信の担い手になることができますが、それは、政府・情報産業が情報発信の特権を握ってきたこれまでのマス・メディアのあり方と対立します。
現在、電子ネットワークとそこに流れる情報をコントロールしようという動きがはっきりと現れてきていますが、その1つが、アメリカ合衆国で2月に成立した通信品位法です。インターネット上で未成年に有害な情報や画像を提供した者に、2年以下の懲役、最高20万ドルの罰金を科すことができるというものですが、何が品位に当たり、何が当たらないのか、その規定はあいまいで、アメリカ市民自由連合、マイクロ・ソフト社などが、表現の自由を保障した合衆国憲法修正第1条に違反するとして、訴訟を起こしています(6月12日に原告が勝訴。フィラデルフィア連邦裁判所から施行差し止めの仮処分命令が出され、被告の合衆国政府は最高裁に上告)。
日本では、やはり2月に、通産省と電子ネットワーク協議会から、2つの自主ガイドライン「電子ネットワーク運営における倫理綱領」と「パソコン通信を利用する方へのルール&マナー集」が出されました。一見、社会常識のような当たり障りのないような内容ですが、その記述は抽象的で、ネットワーク事業者、プロバイダーの自主規制の形を取りながら、事業者にユーザーの発信する情報内容をチェックする権限を与えるものになっています。例えば、倫理綱領に「公序良俗を尊重する」とありますが、いったい何が公序良俗に当たるのかはそこには書かれておらず、その判断はユーザーではなく、事業者あるいはそのシステム・オペレーターに委ねられてしまいます。(問題の詳細は、小倉さんたちの出された抗議文をを見てください。B4で6枚分の資料をコピーしてきてくださったのですが、そのうち抗議文と「倫理綱領」だけを同封します。関心のある方は資料をFIUまで請求してください)。
アートと関連して次のような問題が起きてきます。1.セクシャリティーに関する表現がどこまで許されるのか。例えば、ネットワーク上でのヴァーチャル美術館といったものに、「公序良俗」を持ち込む大義名分を業者に与えてしまいます。2.政治的表現。昭和天皇の肖像を作品に使った大浦作品に関する裁判の中で、富山県側が最近、外国の象徴を侮辱する者はそれを処罰することができるとした日本の刑法を持ち出し、それが天皇にもあてはまると言い出しています。合衆国では、星条旗を燃やすようなこともシンボリックな表現として法的に認められているのですが、例えば、国旗を使った表現がある国では認められ、別の国では認められないといったことが起きてきます。いろいろな形で表現が制約される可能性があります。3.著作権の問題。例えば、クラシック音楽のファンがホームページを作って、そこでモーツァルトの曲を使いたい。自分で演奏するなら構わないかというと、楽譜・編曲者に著作権があって使えない。新聞記事、写真、テレビの画像もだめ。ただ、ビッグ・ネームの人間に金が入っていくような知的所有権のシステムとは違ったかたちで、アーティストの権利を保護していく方法を考えていく必要があるのではないでしょうか。
すでに多くのパソコン通信の業者、プロバイダーが、ユーザーの情報の内容にチェックを入れることを始めています。電気通信事業法には「電気通信事業者の取扱中に係る通信は検閲してはならない」という規定があり、例えばNTTは、電話の内容にはタッチできません。突っぱねてしまえば良かったのですが、「倫理綱領」でユーザ-の情報の内容についての責任を持つことをプロバイダー自身が宣言することで、例えばわいせつな文書・画像の摘発があった場合、プロバイダーにもその責任が及び、プロバイダーが警察とともにユーザーと対立するという構図も生まれてきます。
合衆国も含めて規制を推進しようとする人たちは、インターネットにテレビ並みの規制をしていいと主張しています。誰もが情報発信することができるというメディア特性を持つインターネットの場合、そこで世間話をするとか、人の悪口を言うとか、情報発信の振舞い方が違うわけですから、そこにテレビ並みの規制をかけることはナンセンスです。つまり、今まで情報発信の権限を持ってきた人たちの感覚で、その「お行儀の良さ」をすべての人たちに押しつけようとしている。それが、法的な、あるいは自主規制という強制力でもって行われようとしている状況に危惧を持った方がいいだろうと思います。
合衆国では、裁判のこともあって規制に反対する積極的な動きがあるわけですが、日本でも、もう少しいろいろな形でそうした動きを作っていく必要があるんじゃないかと思っています。政府やプロバイダーに対してどういうふうな働きかけをしていけばいいのかとか、あるいはそれとは別に、ユーザーとしてネットワークの中でどうやって自立していくことができるのかとか、そうしたことを模索していくことができるようなゆるやかな運動体ができればいいと思っています。まだアーティストの参加は少ないので、パソコン通信、インターネットのIDのある方は、参加していただけるとありがたいと思います。……
約1時間の話の後、話の中に出てきたアメリカ市民自由連合とか、規制推進側のアメリカ家族協会、アートの検閲に関するホーム・ページなど、ヴィデオ・プロジェクターで映して紹介してくれました。以上、大雑把なまとめ方になりましたが、小倉さんの話の部分の報告とさせてください。
(守谷)

▲会計報告
普段の集まりに比べて経費はかかりましたが、何とか収支とんとんになりました。たくさんの人たちが参加してくれたことと、小倉さん、粉川さんがほとんど謝礼なしで話しくれたおかげです。また情宣のチラシを作らず、小倉さんのメーリング・リストを利用させてもらいました。カンパを送ってくださった長江さん、どうもありがとう。皆さんに感謝します。
収入
前回繰り越し 12,000円
参加費 31,605円
カンパ 1,000円
計 44,605円
支出
会場費 8,800円
マイク等使用料 2,350円
講師謝礼 10,000円
切手代 7,280円
封筒代 435円
宛名ラベル 880円
コピー代 1,860円
計 31,605円

△次回ミーティングのお知らせ
次回は、8月に東京ビックサイトで行われる展覧会への参加が、話し合いの中心テーマになります。もともとは大榎君に参加依頼があり、FIUは別枠で参加しようとしたのですが、予算等の関係で、結局、大榎君の枠を使ってFIUで参加する形に落ち着きました。
本当は、会合を開いてどういう作品を作るのかというところから話し合えれば良かったのですが、企画書を出さなければならない期限が迫っていたため、大榎君、福田さん、守谷で話し合い、昔、観光地や遊園地にあった、人の姿が描かれている立て看板で、顔の部分に穴が開けられていて、そこから顔を出して写真を写してもらうものを、沖縄、六ヵ所村などをモチーフにして作るという案で出しました。展覧会の概要、作品のコンセプトなど詳細は、当日ミーティングの席で説明します。
日時:6月30日(日)午後6時30分~9時30分
会場:神宮前区民会館(JR原宿駅、または地下鉄明治神宮前駅下車 Tel.03-3409-4565)
参加費:1,000 円程度
問い合わせ:03-3395-6175 守谷


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