ヨーゼフ・ボイス歿後2年


[開催案内]
△ヨーゼフ・ボイス没後2年

〔日時〕 1988年1月24日(日)午後1時30分~4時30分
〔会場〕 東京都中央労政会館第2会議室

〔趣旨とテーマ〕
1986年1月24日に他界した西ドイツの芸術家ヨーゼフ・ボイスにちなんだレクチャー/シンポジウムの第2回です。昨年は、ボイスの作品と思想の錬金術的、ヘルメス主義的側面を見ていきましたので、今回は、ボイス後年の大きなテーマであった「社会彫刻」を、私たちの側に引きよせて考えてみたいと思います。中心テーマは、「芸術と社会」です。

〔プログラム〕
1)スライド上映
 ヨーロッパ各地の美術館をまわって集めたボイスの作品のスライド上映。
 解説:池田 徹(造形作家)
2)ビデオ上映:「コヨーテから」
 1979年N.Y.ロナルド・フェルドマン画廊でのインスタレーション作品とボイスヘのインタビュー。(原題:From Berlin News From The Coyote;10分)
3)針生一郎講演「ボイスとハーケ、ステーク」
 ボイス、ハーケ、ステークという芸術を手段として、社会に働きかけた/かけている3人の作家の比較・対照がなされ、そのなかで針生氏の芸術と社会に対する考えも明らかにされるでしょう。作品のスライド上映あり。
4)シンポジウム「芸術と社会」
 出演:針生一郎(和光大教授)
    若江漢字(造形作家)
    小倉利丸(季刊「クリティーク」編集長)
ボイスと「社会彫刻」、ハーケ、ステークなど社会問題をテーマとした作家たち、社会の中での芸術の役割、日本の芸術と社会の現状など、話題になると思います。また、小倉氏には富山県立近代美術館の事件についても話していただく予定です(資料参照)。後半は、会場の方々にも参加いただいての、質疑応答、ディスカッションになります。どうぞ遠慮なく、ご発言ください。


ハンス・ハーケ
ケルン生まれ。60年代からN.Y.で活動。70年東京ビエンナーレの招待作家のひとり。N.Y.近代美術館での作品、「州知事のロックフェラーは、ニクソンのインドシナ政策を支持しているが、それは、11月の選挙で彼に投票しない理由になるか」どうかをアンケートする。73年グッゲンハイム美術館で、個展が予定されたが、N.Y.の大土地所有者(企業/個人)の登記簿を調べ、その資料を展示することが分かり、担当者は解雇、個展はキャンセルされる。ドクメンタ5、ドイツ人の政治意識の恥部をえぐるような問題を徹底的にアンケート。ドクメンタ7、ペーター・ルドウィヒ(ドイツのチョコレート王。アフリカを搾取して得た金で、美術品の一大コレクションを作った)の一代記をパネル展示。ドクメンタ8、南アから膨大な利益を得るメルセデス・ベンツ社とドイツ銀行を告発する作品。ミュンスターのスカルプチュア・プロジェクト、南アの黒人居住区で警察が市民を抑圧するために使うバス(HIPPO)、と同じく市バスを迷彩塗装し走らせようとするが、拒否される。

クラウス・ステーク
60年代後半に東独から亡命。社会民主党の内部にあって、党に批判的な青年部に所属する。地域の家を一軒いっけんまわって住民の要求をまとめ、各政党につきつけるといった活動を行うビュルガー(市民)イニシアティブの運動にも参加。ドイツ各政党を批判したパロディ・ポスター―たとえば、ヒトラーと党首の像をダブらせたもの―を作り、告訴されるが、ステーク自身が弁護士でもあり、ことごとく勝訴する。出版社「エディション・ステーク」を経営し、ボイス、ハインリッヒ・ベルの本を中心に出版。最近では、ドイツのトルコ人社会を描いた「最低辺」(岩波書店)が、話題を集めている。ポスターのような作品が多く、ドクメンタ8では、ガラスのパイ入れの中に「芸術」を配置した作品、モナリザの下に「秩序がなければならない」と書いた作品を発表している。FIU創設メンバーのひとり。


〔出演者プロフィール〕
池田 徹 造形作家。東京芸大大学院修了後、新宿美術学院で生徒を指導、作家活動を続ける。今回上映のスライドは昨年夏のヨーロッパ旅行で撮影したものが中心。「芸術―平和への対話」展事務局長。

針生一郎 和光大教授、文芸・美術評論家。現在、以下の役職にある。新日本文学会議長、日本アジア・アフリカ作家会議代表世話人の一人、日本アジア・アフリカ・ラテンアメリカ美術家会議議長、FIU JAPAN代表、美術評論家連盟常任委員。

若江漢字 造形作家。日本、ドイツで作家活動を続ける一方、86年「平和への対話」展実行委員会を組織し、「芸術―平和への対話」展、87年「ベルリンの壁グラフィティー」展を開く。月刊「アトリエ」に連載された「ボイス・ノート」を一冊にまとめた本が出版される予定。
※「芸術―平和への対話」展:86年、国際平和年の行事の一環として、横浜市大倉山記念館で開かれたもので、日本とドイツの作家約150名から郵送された作品の展示と、ナムジュン・パイク、山下洋輔、草間彌生、浜田剛爾などのパフォーマンス、平和集会などがもたれた。

小倉利丸 季刊「クリティーク」編集長。富山大学経済学部経営短期大学部教員。富山で「遊学舎」を主宰するほか、「新地平」でも講座をもつ。現在、富山県立近代美術館で非公開とされている大浦作品の公開運動を展開中。

〔主催〕FIU JAPAN
〔協力〕ビデオギャラリーSCAN、美学校


[講演録]
講演とシンポジウムの記録は、加筆されたものが季刊『クリティーク11 』(青弓社、1988年)に掲載されました。ハーケとステークはともに重要な現代作家ですが、日本では取り上げられることが少なく、針生さんの「ボイス、ステーク、ハーケ」は貴重なテキストです。若江さんの「社会改革としての芸術=ヨーゼフ・ボイス」は、「社会改革・芸術・ボイス」と改題され、酒井忠康産との共著として出版された『ヨーゼフ・ボイスの足型』(みすず書房、2013年)にも収録されています。

[参考資料] 小倉利丸「アートは自由だ!「不敬罪」の復活を許すな」(『インパクション50、1987年)

[ヨーゼフ・ボイス歿後2年案内チラシ]
[ヨーゼフ・ボイス歿後2年案内ハガキ]


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