FIU・JAPAN・GAZETTE 1996年5月12日


▽電子ネットワークと表現をめぐって
今年に入って、米国ではいわゆる「通信品位法(Communication Decency Act )」に大統領が署名し、国内でも警視庁によるインターネットプロバイダー(インターネットサービス会社)とそのユーザーに対する家宅捜索と逮捕という動きが出てきました。
通信品位法は、自由な表現を保証し、検閲を禁止している合衆国憲法修正第一条に違反するものとして、インターネット関連企業までが反対の姿勢をあらわしています。これに対し国内では、先の警視庁による捜査が、電気通信事業法に違反している疑いがあるにもかかわらず、逆に、通産省と関連団体である電子ネットワーク協議会が発表した、事業者と利用者に対する自主規制ガイドラインを示したいくつかの文書によって、事態の収拾が行われたかのごとき様相を呈しています。
倫理や人権を口実とした規制の動きは、米国と日本だけではなく、アジアやヨーロッパ各国でも同様であり、この中では、かつては日本のお家芸と思われてきた『自主規制』の手法が採用され始めていることに注目しなくてはならないでしょう。
また一方、電子ネットワークという、自由な複製可能性の領域から発せられてきた権利(著作権)保護の動きは、電子ネットワーク以外の広範なメディアに拡大施行されてゆく可能性があります。さまざまな複製物と引用を前提とした表現は、これに対してどのような態度を取ることができるのでしょうか。
FIU JAPAN (自由国際大学)では、アートにおけるPolitical Correctness(政治的正しさ、政治的品行方正??)というテーマを通して表現の自由を考えていくことを、今年の活動方針の一つにしてきました。そして、こうした電子ネットワーク上のポリティカル・コレクトネスの問題も、ここ数年名指されている、このアートにおける同種の問題と無関係ではないと考えます。
そこで、先の通産省と電子ネットワーク協議会の文書に対する抗議声明を発表し、アートにおける表現の規制にも積極的に抗議の行動を続けている小倉利丸さんと、同じく、早くからこの検閲の動きに注目してきた粉川哲夫さんのお話を通して、電子ネットワークと表現の問題を考える集まりを計画しました。
ネットワーカーとアーティストが、表現の自由をめぐって出会える場にしたいと思います。ぜひ、ご参加ください。
日時:5月12日(日)午後6時30分~9時30分
会場:北沢タウンホール・第3集会室(世田谷区北沢2-8-18 Tel.03-5478-8006  下北沢駅南口徒歩5分)
会費:北沢タウンホールの集会室は、営利活動及び入場料を必要とする催しには利用できません。FIUの活動は非営利で、いつもいただいている会費も入場料ではなく、運営費なわけですが、それでも、その場ではだめだと言うので、今回は別の方法にします。当日相談したいと思います。タウンホールといい、その上にある女性センターといい、本当に困っ たものです。
問い合わせ:大榎(Tel./Fax. 03-3350-6126; E-mail oenoki@ st.rim.or.jp)

▼ミ-ティング報告
いつものように前回のミーティングの内容を短く書きます。昨年11月から話し合ってきたこと、つまり、FIUのこれからの活動の進め方について、一度整理し、まとめておくということだったのですが、「整理し、まとめる」といったほど大げさにはならないで、この間から言ってきたポリティカル・コレクトネスをテーマとした企画と、いくつかの新しい案についての話し合いになりました。下に書き出し、簡単に説明を付します。
a)ポリティカル・コレクトネス(PC)
なかなか進んでいなかったPCについての連続レクチャーですが、上のお知らせのように、第1回めを開きます。次は、PCのアートを中心に8月か9月に行う予定。
b)芸術の政治学展
a)に関連して、芸術の中に政治があり、政治の中に芸術があることをテーマとした展覧会とシンポジウムを開催したい。芸術・表現の規制について、また芸術作品の中に ある政治性について、提示し、話し合う場を作ること。作品の政治性を語ることに対して作家・来場者の反発が予想され、芸術の中の政治の部分については、レクチャー等で補っていく必要がだろう。鑑賞者のためにワークシートが必要か。
c)社会彫刻家展
社会の中で、それを社会彫刻と呼びはしなくても、優れた仕事をしている人たちがいます。そうした人たちの活動を取り上げた展覧会を企画する。例えば、坂本弁護士の、あるいは、これはFIUの活動の最初の頃にあった案ですが、福岡正信の活動など。
d)メディア・ワークショップ
91年にラジオ・ホームランと共催した自由ラジオ・ワークショップを継続、発展させていく。その際に行ったトランスミッターの製作の外、ゼンマイ仕掛けのPHS(もちろんラジオも!)の製作、加藤到さんによるヴィデオ・ワークショップ、インターネット、ヴィデオ・アクティヴィズム等メディアに関連したレクチャー、シンポジウムなど、アイディアはすでにいくつかありますが、さらに増えていくと思います。
e)ボイス・ゼミナール
ヨハネス・シュトゥットゲンを講師に迎えて、3日間程度の公開ゼミナールを開く。テーマは、「ツァイトシュタウ」の最初に掲載されている講演「はりつけ」に見られる ようなボイスの作品の観察を通した把握、これまで紹介されてきていないボイスの教師 としての活動など。
まだ確定したものではなく、実現のためには越えていかなければならない問題もありますが、これらの案から、今後の方向性を読み取っていただければと思います。これまでガゼットに書いてきたアイデアでここに上がってきていないもの、また事務分担等の運営上の事柄については、時間がなく話し合うことができませんでした。これについて次回5月12日の集まりの際に話すことは無理でしょうから、とりあえず保留にしておきたいと思います。
参加者それぞれが仕事を持っており、一度にたくさんのことはできないのですが、できることから始めていきたいと考えています。それぞれの案件について、意見、感想、質問、また役に立つ情報などありましたら、ぜひお知らせください。新しいアイディアも待ってます。
参加者:新井、伊藤、大榎、加藤、黒田、田島、針生、福田、守谷、八鍬、山口(敬称略)

▲会計報告
下の収支表のように、12,000円の黒字。カンパしてくださった田島さん、中本さん、ありがとうございました。次回のミーティングを皮切りに、ゆっくりとですが、プロジェクトが始まります。また、昨年の秋に行われたフォルカー・ハルランさんの講演のテープ起こしを始めました。訳して、ガゼットに掲載する予定です。なるべく赤字を出さないようにしていきますが、今後、収支表ももう少しめり張りのついたものになっていくと思います。収支の動きをにらみながら、どうぞ引き続き支援いただけるようお願いします。
収入
前回繰り越し 9,200円
参加費 10,500円
カンパ 4,000円
計 23,700円
支出
会場費 2,000円
通信費 7,360円
コピー代 1,940円
封筒代 400円
計 11,700円


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